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第4章

仮面城(日文版)-第4章

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     黄金と炭素

 金田一耕助はそれを聞くと、サルのように鉄ばしごをのぼっていった。
 縦穴を出ると、そこにはたたみが三畳しけるくらいの、せまい板の間になっていたが、壁のいっぽうが大きくひらいて、そこから隣のへやの光がパッと、さしこんでいるのだ。
 と、見ればそのへやのなかでもみあう二つの影、ひとりはさっきの西洋よろいなのだが、もうひとりは|筋《きん》|骨《こつ》たくましい大男である。
 大男はいましも西洋よろいをいすに押しつけ、縄でぐるぐるしばっているところだった。西洋よろいはもう抵抗する勇気もうせたか、ぐったりとして、相手のなすがままにまかせている。金田一耕助はそれを見ると、
「なにをする!」
 叫ぶとともにへやのなかへおどりこんだが、この声に、ハッとふりかえった大男は、金田一耕助のすがたを見るとにわかにかたわらのテ芝毪紊悉摔ⅳ盲俊毳辚氓去毪椁い韦婴螭蚴证摔趣辍ⅳ悉盲筏趣肖辘送钉菠膜堡俊
 びんは暖炉の角にあたって、木っぱみじんにくだけるとともに、なかからパッととび散ったのはなにやらえたいの知れぬし勰
 金田一耕助はたくみにその下をかいくぐると、
「なにをする!」
 ふたたび叫んで、手にした懐中電燈を相手にたたきつけた。
 相手もしかし、たくみにそれをさけると、猛然として耕助におどりかかってきたが、いや、その力の強いこと。耕助探偵はたちまち床の上に押し倒され、おまけにぐいぐいのどをしめつけられ、いまにも気が遠くなりそうになったが、そのとき抜け穴からとびだしてきたのが文彦である。このありさまを見ると、ポケットにあった黄金の小箱を、とっさのつぶてとして、はっしとばかりに大男にぶっつけた。
 おどろいたのは大男だった。ギョッとしたように金田一耕助からはなれると、こちらにむかって身がまえたが、そのとたん、文彦もおどろいたが、相手のおどろきはそれよりもっとひどかった。
「ア、ア、ア、ア、ア……」
 ああ、それは口のきけない牛丸青年ではないか。牛丸青年はしばらく、文彦と金田一耕助を見くらべていたが、
「ア、ア、ア、ア、ア……」
 ふたたび奇妙な叫びをあげると、だっと[#「だっと」に傍点]のごとくへやからとびだしていった。そして、そのまま、家の外へ逃げだしてしまったのだ。
「やれやれ、おかげで助かった。もう少しでしめ殺されるところだったよ。おや?」
 床の上に起きなおった金田一耕助が、ふと目をとめたのは黄金の小箱である。
「文彦くん、いま投げつけたのはこれかい」
「はい」
「きみはどうしてこんなものを持っているの」
 文彦が返事をためらっているのを、あやしむようにながめながら、
「こりゃ、たいしたものだね。本物の金だよ。おや、この箱にも|七《しっ》|宝《ぽう》で、トランプのダイヤのもようがちりばめてあるね。ダイヤのあざにダイヤのキング、そしてこの小箱にもダイヤのもよう[#「もよう」に傍点]……」
 金田一耕助はふしぎそうにつぶやきながら、へやのなかを見まわして、
「文彦くん、このへやに見覚えがある?」
「あります。大野老人の客間なんです。そして、そこんとこに西洋のよろいが立っていたんです」
「アッ、西洋のよろいといえば……」
 気がついてふりかえると、西洋よろいはいすになかばしばられたまま、ぐったりとしている。どうやら気を失っているようすである。
「おい、しっかりしろ!」
 金田一耕助と文彦は、つかつかとそばへ近寄り、かぶとをぬがせてやったが、そのとたん、ふたりとも思わず床からとびあがった。なんと、よろいのなかにいる人物は、文彦とおなじ年ごろの少年ではないか。
「先生、こ、これは……」
「ふむ、こいつは意外だ。こいつがこんな子どもとは……とにかく、縄をといて、よろいをぬがせてやりたまえ」
 ふたりは大急ぎで少年の縄をとき、よろいをぬがせてやったが、そのとたん、文彦はまたもや床からとびあがったのだった。
「ど、ど、どうした文彦くん」
「先生、こ、これを……」
 文彦の指さしたのは、怪少年の右腕の内側だったが、なんとそこには文彦の、左腕にあるのとおなじ、ダイヤがたのあざが、うすモモ色にうかびあがっているではないか。
「ああ、ダイヤ……ここにもダイヤ……」
 金田一耕助はくいいるように、その小さなあざをながめていたが、やがてハッと目をかがやかせると、暖炉のそばへ近寄って、一つまみの粉末をつまみあげた。それはさっき牛丸青年が投げつけた、びんのなかからとび散った粉末なのだ。
 金田一耕助はその粉末を、くいいるように見つめていたが、やがて大きく息をはずませると、
「文彦くん、き、き、きみには、こ、これがなんだかわかるかい。こ、これは炭だよ。し、しかも、純粋な、なんのまざり気もない、炭素なんだよ」
 金田一耕助は興奮にふるえる声でそういうと、まるでふかいふかいふちでものぞくような目の色をして、ジッと考えこんでしまった。

     ふしぎな機械

「先生、この子はだれでしょう。どうしてよろいのなかにかくれていたんでしょう?」
「わからない。それはぼくにもわからない。とにかく、気を失っているようだから、そのソファ饲蓼护皮い啤荬膜韦虼膜长趣摔筏瑜Δ袱悚胜い
 金田一耕助はおちついていた。いや、おちついているというよりも、なにかほかのことに、頭をなやましているらしいのだ。
「文彦くん、きみはこの家の地下室から、奇妙な音が聞こえてきたといったね。ひとつ、それを眨伽皮撙瑜Δ袱悚胜い
「先生、だいじょうぶでしょうか」
「だいじょうぶだよ。きみもきたまえ」
 金田一耕助は怪少年のからだを、ソファ紊悉饲蓼护毪取⑽难澶趣趣猡摔丐浃虺訾俊¥饯欷摔筏皮狻⒗先摔湎愦婴悉嗓Δ筏郡韦坤恧Α<窑韦胜摔悉ⅳⅳ取㈦姛簸膜い皮い毪趣いΔ韦恕ⅳ嗓长摔馊擞挨弦姢à胜い韦扦ⅳ搿
「先生、この家のひとたちは、いったい、どこへいったんでしょう?」
「逃げだしたんだよ。ダイヤのキングにおどかされて、どこかへ逃げてしまったんだ」
 ふたりは家のなかをさがしまわったが、さいごに階段のそばまでくると、金田一耕助がふと立ちどまって、
「おや、こんなところに押しボタンが……」
 なるほど、見れば階段のあがりぐちの手すりのかげに、よびりんの頭ぐらいの、小さな押しボタンがついている。金田一耕助がためしにそれを押してみると、目のまえの杉戸が、だしぬけに大きく回転して、そのあとにはまっ暗な穴。そして、その穴のなかには、地下室へおりていく、コンクリ趣坞A段がついているではないか。
 金田一耕助はたもとから、懐中電燈をとりだすと、文彦をしたがえて、用心ぶかく、その階段をおりていった。プ螭趣摔Ε婴丹い摔ぁ¥栅郡辘韦筏氦首阋簸丹à狻ⅳ证撙摔ⅳ郡辘摔长坤蓼工搿
 やがて、文彦の足は、かたいゆか[#「ゆか」に傍点]にさわった。金田一耕助は、しばらく壁の上をさぐっていたが、やがて、スイッチをひねって、パッと電燈をつけた。青白い|蛍《けい》|光《こう》|燈《とう》がくっきりとへやのようすを照らしだす。
 そこは十六畳ぐらいの地下室で、壁も床も天じょうも、まっ白にぬられていた。
 文彦は一目その地下室を見たとき、なんともいえぬみょうな気がした。
 へやのまんなかには、一メ去肓⒎饯椁い未螭丹巍ⅳ胜螭趣猡à郡い沃欷虣C械があるのだ。鉄の歯車やくさりが、ゴチャゴチャとからみあって、文彦がいままで、見たこともないような機械だった。
 そのほか、薬品戸だなや、ガラスの器具や、流しや、バ施‘や試験管など、まるで、学校の理科の実験室のようである。
 金田一耕助は目を光らせて、機械をのぞきこんでいたが、やがて台の上を指でこすると蛍光燈の光で、ジッとながめていた。
「先生、これはいったい、なんの機械でしょう?」
「文彦くん、きみはこの地下室から、みょうな音が聞こえてきた、といったね。それはきっと、この機械が動く音だったんだよ」
 金田一耕助はむずかしい顔をして、
「くわしいことはぼくにもわからない。それにこの機械はこわれている。だれかがこわしていったんだ。しかし、ぼくにはこの機械が、炭素の|精《せい》|製《せい》|機《き》、木炭などの粉末から、純粋の炭素を製造する機械としか思えない」
 ああ、それにしても、純粋な炭素を製造して、いったいどうしようというのだろうか。
 金田一耕助はまたしてもジッと考えこんだ。

     怪少年の告白

 それから間もなくふたりが、地下室から応接室へ帰ってくると、ちょうどいいぐあいに、少年が息をふきかえしているところだった。少年はふしぎそうにキョトキョトと、あたりを見まわしていたが、金田一耕助や文彦のすがたを見ると、キャッと叫んで、逃げだそうとした。
「だいじょうぶだ。なにもこわがることはない」
 金田一耕助は少年のかたを押さえると、
「きみはいったいだれなの。どうして、よろいのなかなんかにかくれていたの」
 見るとその子は目のクリクリとした、いかにもすばしっこそうな少年だったが、耕助にそうたずねられると、みるみるまっ青になって、
「おじさん、そ、それはいえません。それをいったら、ぼく、殺されてしまいます」
「殺される……? は、は、は、バカな。いったいだれが、きみを殺そうというんだい」
「おばあさんです。蕙螗趣蜃扭俊⒛Хㄊ工い韦瑜Δ胜肖ⅳ丹螭
 ふたりは思わず顔を見合わせた。
「きみ、なにも心配することはない。おじさんは警察のひとたちにも、たくさん知り合いがあるからね。きっときみを守ってあげる。だから、さあ、なにもかも話してごらん」
「おじさん、それ、ほんと?」
「ほんとだよ。きみ、このおじさんは金田一耕助といって、とてもえらい探偵なんだよ」
 文彦がほこらしげにいうと、少年は目を光らせて、
「おじさん、ほんと? すごいなあ。それじゃおじさん、ぼく、なにもかもいってしまうから、ぼくを助手にしてください」
「よしよし、きみはりこうそうな顔をしているから、きっと役に立つだろう。さあ、話してごらん」
「うん」
 と、強くうなずいて、その少年の語るところによるとこうだった。
 魔法使いのようなおばあさんは、その子を竹田文彦だといって連れてきたのだという。しかし、そのうそはすぐにばれてしまった。大野老人は右腕にあるあざを見ると、
「うそだ! この子は文彦じゃない。文彦のあざは左の腕にあるはずだ!」
 それを聞くとおばあさんは、しまったとばかりにつえをふりあげて、大野老人をなぐり倒した。そして老人が気を失っているあいだに、大急ぎでその子によろいを着せ、よくこの家を見張っているようにと命じて、あわててそこを立ち去ったというのである。
 少年はそれからずっとよろいのなかから、あたりのようすをうかがっていたが、とうとう本物の文彦に、それを感づかれてしまった。文彦から注意をうけた香代子は、急いで家へ帰ってくると大野老人にそのことを耳打ちした。
 少年はとうとう見つかってしまった。大野老人は少年をよろいごと、いす[#「いす」に傍点]にしばりつけると、いろんなことをたずねたが、それからきゅうに大さわぎをして荷物をまとめて、自動車で逃げてしまったらしいのだ。
 ところがそれから間もなくまた、魔法使いのようなおばあさんがやってきた。そして少年の見たこと、聞いたことを話させた。少年は本物の文彦がきたこと、金の小箱をもらっていったこと、さてはまた、文彦の住所まで話してしまった。おばあさんは縄をといてくれたが、もうしばらくそっとして、ようすを見ているようにといって、急いで出かけてしまったというのだった。
「ぼくはしばらく待っていましたが、なんだかこわくなってきたので、逃げだそうと思ったんです。しかし、あのよろいは、とてもひとりではぬげません。それでよろいごとこの家をぬけだして、ふうふう步いているうちに、おじさんたちがやってきたので林のなかへ逃げこんだんです」
 少年の話がおわると、金田一耕助はうなずいて、
「なるほど、みょうな話だね。しかし、きみは、どうしてそのおばあさんと知り合いになったの?」
「ぼくは上野で、くつみがきをしてたんです。何年もまえからずっとそんなことをしていたんです。ぼくの名、|三《さん》|太《た》というんです。するとある日、あのおばあさんがやってきて、まごが死んだからそのかわりに家へひきとって育ててやろうと、あそこへ連れていったんです」
「あそこって、どこだい?」
 金田一耕助がそうたずねると、とたんに、少年の顔がまっ青になった。ブルブルからだをふるわせながら、
「いえません。それだけはいえません。あそこは地獄だ。地獄のようなところです。銀仮面……仮面の城……ああ、恐ろしい。それをしゃべったら、こんどこそ殺されてしまいます」
 少年はそれきり口をつぐんでしまって、金田一耕助がどんなになだめてもすかしても、がんとして口をひらこうとはしなかった。
 ああ、それにしても、いま少年の口走った銀仮面、仮面の城とはなんのことだろうか。

     茫茸

 三太はかわいそうな少年だった。かれは自分の名まえも|名字《みょうじ》も知らないのだ。道を步いているときに車にはねられてしまい、ひどく頭をうって、それから自分がだれだか、忘れてしまったらしいのだ。おとうさんやおかあさんが、あるのかないのか、それさえわからなくなってしまったのである。仲間はかれを、三太だとか|三《さん》|公《こう》だとか呼んでいるが、それもかってにつけた名まえで、ほんとの名まえではない。
 それを聞くと文彦は、たいそうこの少年に同情してしまった。金田一耕助もあわれに思って、自分の家へ連れていくことになった。
「とにかく文彦くん、きみを先に送っていこう」
「でも、先生、そうすると電車がなくなって、おうちへ帰ることができなくなりますよ」
「なに、だいじょうぶだ。自動車もあるし……」
 そこで金田一耕助は三太を連れて、文彦を送っていくことになったが、じっさい、夜はもうすっかりふけて、三人が文彦のうちのそばまで帰ってきたときには、もう十二時近くになっていた。むろん、どの家もピッタリしまって、電燈の光も見えない。月も西にかたむいて空には星が二つ三つ。
 さて、文彦のうちへ帰るには、電車をおりてから、長い坂をのぼらねばならない。ところが、三人がその坂の途中まできたときだった。とつぜん、坂の上から自動車がもうれつな勢いでおりてきた。
 その自動車のヘッドライトを頭から、あびせかけられた三人は、あわててみちばたにとびのいたが、すると、間もなくそばを走りすぎる自動車から、ヌ盲阮啢颏坤筏郡韦稀ⅳⅳⅳ胜螭趣いΔ长趣坤恧Α¥埭蚊妞韦瑜Δ衰磨毳磨毪趣筏啤ⅳ筏狻ⅴ楗殂y色にかがやく顔ではないか。
「アッ、銀仮面だ!」
 叫ぶとともに三太少年、がばと地上にひれふしたが、そのとたん、
 ズドン!
 自動車の窓から火を噴いて、一発のたま[#「たま」に傍点]が、三太の頭の上をとんでいった。ああ、あぶない、あぶない、三太がぼんやり立っていたら一発のもとにうち殺されていたことだろう。
「ちくしょうッ!」
 金田一耕助はバラバラとあとを追いかけたが、相手はなにしろフル.スピ嗓亲撙盲皮い胱詣榆嚖扦ⅳ搿¥蓼郡郡gにそのかたちはやみのなかに消えてしまった。しかも、テ毳楗螗驻庀筏皮い郡韦恰ⅴ圣螗些‘.プレ趣蛞姢毪长趣猡扦胜盲郡韦馈
 金田一耕助はすぐにもよりの交番へかけつけ、身分をうちあけ大至急、怪自動車をとり押さえるよう、手配をしてもらった。それから文彦のほうをふりかえると、
「文彦くん、とにかくきみのうちへいこう。なんだか気になる。あの自動車はきみのうちのほうからやってきたぜ」
「せ、先生!」
 文彦はガタガタふるえている。
「心配するな。三太、きみが銀仮面というのは、いまのやつのことかい?」
「そ、そうです。おじさん、あいつは、ぼ、ぼくを殺そうとしたのです」
 これまた、まっ青になって、ガタガタふるえているのだ。
「ふむ、ヘッドライトの光で、きみのすがたを見つけたので、びっくりして、

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